プロローグ
不惑を目前にして気が付いたことがある。
不惑とは言うが、中年の心は不安定である。
刻まれるシワ、進む老眼、増える背中肉。
私たちはどうあがいてももう大臣にも博士にもなれないことを知っている。
子供のころに夢見たアイスクリーム屋さんだって難しい。
だからと言って、中年は「じゃ、後は若い方々でね」と退席するわけにもいかないのだ。
長くも短くもない来し方行く末を思うとき、だれが惑わずにいられよう。
そんな2022年の初め、浅田次郎先生の「日本の『運命』について語ろう」という本を読んでいると、浅田先生が2年かけて中山道を踏破したという記述があった。
先生によれば我々は歴史から「教訓」を発見せねばならないらしい。
そうか、中年心を持て余した私に必要なのは参勤交代かもしれぬ。
かくして私は浅田先生に倣って、2年かけての中山道踏破を思い立ったのである。
実はこのイントロは日本橋から板橋を歩き終えた後に書いているのだが、すでに一つ後悔していることがある。
なぜ東海道を選ばなかったのか。何を隠そう私は静岡県民なのだ。
サラリーマン稼業と両立しながら切れ切れに歩く中山道である。
どう考えても往復が負担である。
まだまだ序盤なのだから、もちろん東海道に仕切りなおしてもよかろう。
しかし、書いてしまったのだ。2022年の真新しい手帳の一番初めに。「中山道を踏破する」と。
中山道がどこかなんてよく知らなかったぜ。
2023年12月、見事京都にたどりつくことができるのか、見守っていただければ幸いです。
【中古】【古本】日本の「運命」について語ろう 幻冬舎 浅田次郎/著【文芸 エッセイ エッセイ 男性作家】 価格:924円 |